第21回日本運動疫学会学術総会および最優秀・優秀演題賞のご報告
2018年6月23日(土)、24日(日)の両日に、早稲田大学大隈小講堂をメイン会場として、第21回日本運動疫学会学術総会が開催されました。
今回の学術総会には約150人の方々にご参加いただき、大変盛大で有意義な学術総会となりました。学術総会開催にあたり、共催いただいた早稲田大学スポーツ科学学術院、広告等でご協力いただきましたオムロンヘルスケア株式会社、森永製菓株式会社、株式会社大修館書店には、この場を借りて感謝申し上げます。
今回の学術総会のテーマは、“Stand Up, Sit Less, Move More!”とさせていただきました。できる限り座りがちな生活を見直し、少しでも身体活動を増やすための効果的な戦略や、研究・実践上の課題について、参加者同士が大いに議論でき、貴重な学術交流の場になったと確信しております。
プログラムの内容に関して、今回は特別講演としてカルガリー大学からGavin McCormack先生を招待いたしました。McCormack先生は、現在University of CalgaryのDepartment of Community Health Sciencesの准教授であり、身体活動推進のための環境的アプローチに関する研究分野において非常に活躍されています。当日は、“(Un)Healthy Neighbourhoods: Built Form Shaping Physical Activity, Weight, and Health”と題して、カナダにおける非常に興味深い研究成果や実践的な取り組みをご紹介いただきました。座長を務めていただきました柴田愛先生 (筑波大学) にも感謝いたします。
また、今回は3つの教育講演を企画いたしました。東北大学の中谷友樹先生には「運動の地理疫学とGIS」、大阪大学の平井啓先生は「運動疫学研究に活かす行動経済学」、早稲田大学の柴田重信先生には「時間栄養・時間運動の視点による健康科学」といったテーマでご講演いただきました。どの内容も、今の運動疫学の研究分野にとって必要不可欠なテーマであり、多くのことが学べたのではないかと考えています。それぞれの講演で座長を務めていただきました、小熊祐子先生 (慶應義塾大学)、甲斐裕子先生 (公益財団法人明治安田厚生事業団体力医学研究所)、村上晴香先生 (国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所) にも感謝申し上げます。
さらに、井上茂先生 (東京医科大学)、澤田亨先生 (早稲田大学) を座長として行われましたシンポジウム1「運動疫学研究の今とこれから」では、門間陽樹先生 (東北大学) から「体力疫学の今とこれから〜1周回って知らない体力疫学〜」、笹井浩行先生 (東京大学) から「活動量評価の今とこれから」、中田由夫先生 (筑波大学) から「これまでの運動介入研究と今後の課題」、齋藤義信先生 (慶應義塾大学) から「身体活動促進のポピュレーション戦略〜ふじさわプラス・テンプロジェクトを事例に〜」、澤田亨先生から「健康政策への貢献の「今とこれから」」と題する話題提供が行われました。運動疫学分野の幅広いテーマについて、どの発表も非常に分かりやすくまとめていただき、今後の研究課題の整理ができたのではないかと思います。また、シンポジウム2「運動疫学を担う熱き若手の思い−エキスパートの期待を添えて−」については、鎌田真光先生 (東京大学)、門間陽樹先生 (東北大学) を座長として開催されました。シンポジストとして、小熊祐子先生 (慶應義塾大学)、田島敬之先生 (慶應義塾大学大学院)、天笠志保先生 (東京医科大学大学院)、鎌田真光先生 (東京大学) をお迎えし、若手研究者の日頃の苦労や今後の希望、またベテラン研究者から若手研究者への期待なども含め、興味深い議論ができたのではないかと思います。
初日の夜には、早稲田大学大隈ガーデンハウスにおいて毎年恒例の懇親会が開催されました。数多くの方々にご参加いただき、参加者同士の親睦も深まったのではないかと思います。
一般演題に関しては、口頭発表が4演題、ポスター発表が14演題と合計18演題の発表がありました。例年通りどの発表も質の高いものであり、日本の運動疫学研究者たちのポテンシャルの高さを感じることができました。ポスター発表は、軽食を摂りながら、リラックスした雰囲気の中で活発な質問や意見交換が行われていたと思います。
一般発表18演題のうち、事務局から選出させていただいた審査員による厳正なる審査の結果、最優秀演題賞を上村一貴先生(富山県立大学)の「高齢者の身体活動促進に向けたアクティブ・ラーニング型健康教育介入の効果検証〜ランダム化比較試験〜」が、優秀演題賞を菊池宏幸先生(東京医科大学)の「超過勤務時間と運動習慣の関連」ならびに辻大士先生 (千葉大学) の「高齢者における地域レベルのスポーツグループ参加割合と認知症発症〜JAGESにおける6年間の縦断コホート研究〜」が受賞されました。誠におめでとうございました。
最優秀演題賞 上村一貴先生(富山県立大学)
優秀演題賞 菊池宏幸先生(東京医科大学)
優秀演題賞 辻大士先生 (千葉大学)
来年度の学術総会は、小熊祐子先生(慶應義塾大学)を大会長として、2019年6月22日(土)、23日(日)の二日間にわたり慶應義塾大学日吉キャンパスにおいて開催される予定です。来年の学術総会も、みなさまの積極的なご参加ならびにご発表をよろしくお願いいたします。
メイン会場(大隈小講堂)
集合写真
(第21回日本運動疫学会学術総会事務局長 石井香織)